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開かずのダイヤル錠と格闘した長い夜
それは、私が大学生だった頃、夏休みの海外旅行を前にして、押し入れの奥から、何年も使っていなかった古いスーツケースを引っ張り出した時のことでした。長期の旅に備え、念のためにと、スーツケースに付いていた三桁のダイヤルロックを、何気なくかけてしまったのです。そして、出発前夜、荷物を詰めようとした時、私は愕然としました。その時、適当に設定したはずのダイヤルの番号が、全く思い出せないのです。最初は、高をくくっていました。自分の誕生日や、電話番号の下三桁など、自分が設定しそうな番号を、片っ端から試しました。しかし、ロックは、うんともすんとも言いません。時計の針は、すでに夜の十時を回っています。航空券も、パスポートも、全て、このスーツケースの中。明日の早朝には、家を出なければならない。一気に血の気が引き、冷や汗が背中を伝いました。友人に電話して助けを求めることも考えましたが、深夜に迷惑はかけられません。残された道は、一つしかありませんでした。「000」から「999」まで、千通りの組み合わせを、全て試すという、絶望的な作業です。私は、床に座り込み、テレビをつけ、心を無にして、その長い戦いを開始しました。「000、開かない。001、開かない…」。ダイヤルを回すカチカチという音が、やけに部屋に響きます。二百番台、五百番台と進むにつれ、指先は痛くなり、睡魔が襲ってきます。しかし、諦めるわけにはいきません。そして、作業開始から四十分ほど経った頃でしょうか。確か、「738」に合わせた時でした。いつものように解錠ボタンを押すと、今までとは違う、軽い手応えと共に、「カチン」という、天の助けのような音がしたのです。スーツケースが開いた時の、あの安堵感は、今でも忘れられません。
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ドアノブ交換に必要な道具はこれだけ
「自分でドアノブ交換に挑戦してみよう!」そう決意した時、多くの人がまず新しいドアノブを探し始めます。しかし、それと同じくらい重要なのが、作業をスムーズかつ安全に進めるための「道具」を、事前にきちんと準備しておくことです。いざ作業を始めてから、「あれがない、これがない」と慌てることがないように、DIYでのドアノブ交換に、必要となる基本的な道具と、その選び方のポイントを、確認しておきましょう。まず、絶対に欠かせないのが、「ドライバー」です。錠前のネジは、プラスネジとマイナスネジの両方が使われていることが多いため、必ず、両方のタイプを用意してください。ここで重要なのが、「サイズ」と「種類」です。ネジの頭の溝の大きさに合わないドライバーを使うと、ネジ山を潰してしまい、ネジが回せなくなる原因となります。特に、プラスドライバーには、#1, #2, #3といったサイズがあるので、一般家庭でよく使われる#2を中心に、いくつかのサイズがセットになったものがあると安心です。また、普通のドライバーでは届かない、奥まった場所のネジを回すために、軸の長いドライバーや、逆に、狭い場所で力を入れやすい、柄の短い「スタビードライバー」もあると、何かと便利です。次に、DIYの基本中の基本とも言える「メジャー(コンベックス)」です。前述の通り、ドアノブ交換の成否は、正確な採寸にかかっています。ドアの厚みやバックセットなどを、ミリ単位で正確に測るために、JIS規格に合格した、精度の高いメジャーを用意しましょう。そして、円筒錠のドアノブを外す際に、必須となるのが、「キリ」や「千枚通し」、あるいは、伸ばした「ペーパークリップ」の先などの、細くて硬い棒状のものです。これは、ノブの根元にある、小さな解除ボタンを押すために使います。安全ピンなどでも代用できますが、ある程度の硬さがないと、うまく押せない場合があります。これらの基本的な道具に加えて、細かい部品をなくさないための「トレー」や、ドアを傷つけないための「養生テープ」、そして、作業の際に手を保護するための「軍手」などがあれば、さらに万全です。