家庭用金庫の導入を考え始めたものの、その種類の多さに戸惑う方もいらっしゃるでしょう。金庫は、主に「耐火金庫」「防盗金庫」「耐火・防盗金庫」の三つに大別され、それぞれ特徴や得意とする守備範囲が異なります。ご自身の目的や保管したいもの、そして予算に合わせて最適なタイプを選ぶことが重要です。まず「耐火金庫」ですが、これはその名の通り、火災から中のものを守ることを主目的としています。JIS規格(日本産業規格)では、火災発生から一定時間、金庫内の温度を紙が燃え始める摂氏177度以下に保つことが求められています。耐火時間には30分、1時間、2時間などの区分があり、時間が長いほど高性能と言えます。主に書類や現金、有価証券、思い出の品など、熱に弱いものを保管するのに適しています。ただし、耐火金庫はあくまで火災対策がメインであり、バールなどによるこじ開けといった物理的な破壊に対する強度は、防盗金庫ほど高くありません。次に「防盗金庫」です。こちらは、盗難被害を防ぐことに特化しており、ドリルやハンマー、バーナーといった工具による破壊行為や、金庫ごとの持ち去りに対して高い抵抗力を持つように設計されています。JIS規格では、工具の種類や攻撃時間によって耐破壊性能のグレードが定められています。宝石や貴金属、重要なデータメディアなど、高価で盗難リスクの高いものを保管するのに向いています。しかし、耐火性能は付加されていないか、あるいは限定的であることが多いため、火災対策としては別途考慮が必要です。そして、これらの両方の性能を兼ね備えたのが「耐火・防盗金庫」です。火災からも盗難からも大切なものを守りたいというニーズに応える製品で、最も安心感が高いと言えるでしょう。ただし、高性能な分、価格も高くなる傾向がありますし、重量もかなり重くなるため設置場所の選定には注意が必要です。これらの基本的な種類に加えて、鍵のタイプも様々です。伝統的なダイヤル式やシリンダー式(鍵式)のほか、操作が簡単なテンキー式(暗証番号)、セキュリティの高い指紋認証式などがあります。それぞれにメリット・デメリットがあり、例えばダイヤル式は電池切れの心配がありませんが、開錠に手間と慣れが必要です。